今年は摘果の方法を昨年までと180度変え、樹の上部1/3〜1/2ほど全て取る(※)という、今まででは考えられない方法を取り入れてみました。これは方法だけを変えたのではなく、今まで樹が枯れるかどうかというところまで弱らせないと美味しいミカンは出来ない、という考え方から、樹を元気にしてその活力で美味しいミカンを作る、という考え方に転換するというものでした。
ミカンが少し色づき始めた頃、昨年までの摘果のやり方の樹は早くから実が赤くなり始め、上部摘果の方はなかなか赤くなりませんでした。さらに糖度も低かったので上部摘果ではダメなのかなと思っていましたが、今はもう真っ赤になり糖度も平年並みになってきています。このように樹を元気にして作ったミカンには、糖度や酸度に表れない活力があるのではないかと、今年のミカンの特徴のひとつだと思います。(右上の写真は上部摘果された『紅俺ん路』) |
また、今年の天候は雨がここ2、3年の2〜3倍降りました。これだけ雨が多いと、いったいどんなミカンになるのかと心配していましたが、タイベックシートとタイベックシート間(通路)にもビニールを敷き、水が土中に染み込むのを極力防いできました。キトサン(カニ殻エキス)やブドウ糖・木酢液の葉面散布、木炭を撒布して細根の発育促進・有用微生物の繁殖を促進させるなど、良いと思われることは全てやりました。結果は全国的にまずいミカンの多い中、なんとか『紅俺ん路みかん』として出せるレベルになってきました。
(通路にもビニールを敷いて水分をカット!!) |
雨が多かったので平年より酸が少なめで食べやすい味になっています。一般的には相反することなのですが、いかに樹を元気にさせて、なおかつ味も良くするか、という技術を確立し、みなさんに末永く『紅俺ん路みかん』を味わって欲しいと思います。 2003年11月末 上門園 代表 上門庄亮
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(※)【解説】
ミカンは過剰に結果させると味は良くなるのですが、果実の玉太りが悪くなるなど養分の競合が起こります。そこで品質を高めるために人為的に結果調整をするのが摘果です。一般的にミカンの摘果というと、下枝果や内成り果を落とすのが普通でした。ただ、この部位の果実を摘果しても使われなかった養分はその周辺にしかいかず、あまり根には戻りません。今回行った『上部摘果』では、養分の多くは根に蓄積されて翌年の貯蔵養分となり、根や枝葉の充実に使われます。そのため樹は元気になり、隔年結果(豊作・不作を1年ごとに繰り返す)も防止できて、毎年安定した品質のミカンができると考えられます。
(光センサーで糖度測定中) |
そんなわけで、今年も手間ひま掛けて美味しいミカンができました。来年の春にはこれまた美味しい『紅俺ん路みかんジュース』になっているはずです。早くもこれで、今年最後の南風の里ニュースとなりました。
それでは皆様、良いお年を!! 来年も変わらぬご愛顧の程、よろしくお願い申し上げます。
by HIRO |